印章の文化史
2020/09/01

蔵書印とは Ⅰ

~ はじめに ~
蔵書印とは、書籍の所蔵者を明らかにするために書籍に押した印を意味します。
普段、私たちがよく目にするものは図書館や資料室などの蔵書印で、日付と所蔵団体名が分かりやすくはっきり入ったものだと思います。
それらとは異なり、普段滅多に出会うことのない個人所蔵の蔵書印もあります。
個人所蔵印の場合、個人の趣味が色濃く反映され、形や字体、イラスト等様々なものが存在し、所蔵者の書籍に対する愛しさのようなものを感じることができます。
今回は、蔵書印の歴史やさまざまな蔵書印など、蔵書印の魅力を紹介します。

~ 蔵書印の歴史 (その1 蔵書印の始まり)~
蔵書印の始まりは中国の宋(960年~1279年)の時代といわれています。
中国では、持ち主や所蔵を示すために押される印章は所蔵印や鑑蔵印と呼ばれており、鑑蔵印は所蔵に限らず鑑定した人が押すこともありました。そうした所蔵印の一種で書籍に押すものを蔵書印といいました。
宋の時代では、隋または唐初期に始まった木版印刷が文治主義の下で広く普及し、出版が発達しました。書画の鑑蔵印(収集家が鑑識収蔵したことを示すため書画に押す印章)のように書籍の鑑蔵を示す最古の印はこの時代のものとされています。
それ以降の時代では、蔵書印自体が趣味の対象となっていったようです。

いろいろな蔵書印
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